エコ住宅

エコロジー住宅の試み
2000/4 作製、2001/1 追加
< もくじ >
エコ住宅
屋根に緑地
断熱に優れたドイツの住宅
庭にはコンポスト
お庭拝見!
エコ住宅は広まるか?

 
エコ住宅
ここでは友人が住むエコ住宅を紹介します。友人一家は小さな子供3人がいる5人家族。一部4階建ての建物に、全部で14家族が住んでいます。設計から住民が参加し、2週間に一度、建築家を加えて話し合いをしながら建てました。仲介の業者を通さず、住民が直接建築家と話し合って建てたので、苦労も多かったけど安く満足のいくものができたようです。

この住宅の大きな特徴は、建設、居住、解体のすべての面でエコロジーの考えを取り入れていることです。

ポイント:
建設の工法をなるべく簡単に
解体後のリサイクルを考えて建築材料を選ぶ
窓や壁の断熱性を高める
南向きの窓を大きくする
熱交換しながら換気する
利用太陽熱温水器を屋根につける
屋根に緑地を作る、など
屋根に緑地
草の植えられた屋根もエコロジービオトープの考え方の一つです。土の厚さは約20センチ。乾燥と熱に強く、屋根に植えるのに適した植物は何種類かあります。ここではそれを混ぜて植えるのではなく、屋根をます目に区切ってそれぞれ別の種類を植えています。その方が管理が簡単だということです。そのため屋根の色が均一ではありません。
ビオトープ?』で紹介した小学校の体育館の屋上と同じで、住宅を建てるために無くなってしまう緑地を少しでも回復するのが目的です。これで約3分の2の緑地を取り戻すことができました。飛行機から見ると普通の住宅の屋根は赤や黒なので一目で区別がつきます。でもこのエコ住宅の屋根を見つけるのは大変だそうです。鳥や昆虫の目にはどのように見えるのでしょうか。
 
 
 
 
断熱に優れたドイツの住宅
ドイツの住宅の省エネルギーは、冬にどれだけ少ないエネルギーで暖房できるかにかかっています。ほぼ100%の住宅の窓が2重窓だし、外に熱を逃さないように壁もすごく厚くできています。夏の暑さのことも考えなくてはいけない日本に比べると,そのぶんだけ話は単純です。
市の省エネセンター
市の省エネセンターに展示してある2重窓です。窓と窓枠を半分に切って構造が良く分かるようになっています。ずいぶん頑丈にできていますね。
枠は木製が人気
この窓枠は木製です。プラスチック製、アルミ製の枠もありますが今はよりエコロジカルな木製が人気です。耐久性について聞いたら、手入れさえすれば全く問題ないそうです。写真の上に見えるロール状のものはシャッター。
友人の住むエコ住宅の窓枠もやはり木製。2重窓の内側にはさらに、赤外線を外に出さないようなフィルムが張ってあるそうです。窓枠の作りも良く、隙間から冷気が入ってくることもありません。

そうなると、こんどは換気の問題がでてきます。普通の住宅なら、『すきま風』プラス『時々の換気』で十分でも、気密性がよすぎると対策が必要です。そのために特別な換気扇をつけて、外の冷たい空気と室内の暖かい空気を熱交換してから新鮮な空気を室内に入れています。
分厚い石の壁
これも展示してある住宅の壁です。厚さ約60センチ! 上のブロックはコンクリート製で、外側(写真では左側になる)に断熱材(青い発砲スチロール)が使われています。下の茶色に見える部分はレンガですが、中に穴がたくさんあいていて断熱性を高めています。
他にも壁の素材はたくさんあります、耐久性、加工のしやすさ、値段などを考えて素材が選ばれます。最近では
・ブロックを作るときどれだけ環境に配慮しているか
・解体後のリサイクルのしやすさ
などが、素材選びの基準に加わりました。

友人のエコ住宅の土台と各階の床は、強さが必要なのでコンクリートが使われています。その他の壁は、この地方に産出する砂を使って焼き固めたブロックです。もちろん、そのブロックは建物の解体後、他の建築材料としてリサイクルが可能です。
 
 
 
 

庭にはコンポスト
友人一家は一階に住んでいるので、広い庭があり、生ごみ用のコンポストが置いてあります。庭のある家がコンポストを置くのは特別なことではありません。庭のある家庭からは市が生ごみを回収してくれないので、コンポストを作らなければならないという事情もあります。

コンポストを作るといっても、難しくはありません。写真のコンポストは最も簡単なもの。

木製のコンポスト
ホームセンターで売っている木製のコンポスト(要するに、木の枠)を買ってきて庭に置きます。左側が1年目用。右が2年目用。2年目の今は、右のコンポストにだけ生ごみを入れています。予定ではコンポストの生ごみは1年で土に返るはず。1年交代で2つのコンポストを使うわけです。
なかなか土にならないなー
なかなか土に返ってくれません。夏の直射日光が暑すぎるようです。横に植えてある植木が大きくなり日陰を作るようになるといいみたい。カボチャやズッキーニをコンポストの上に直接植えてもいいそうです。おいしいカボチャやズッキーニが収穫できます。
ミミズくん発見!
コンポストをちょっと掘ってみると、ミミズがたくさんでてきます。ミミズが一生懸命(?)土を作っているわけですが、ミミズがたくさんいるのはまだ土になっていない証拠。コンポストはちゃんと土に返ってから畑にまきます。
仲良く並ぶコンポスト
右の二つが友人一家ので、左の二つは隣の人のです。2階と3階に住む人はコンポストを作れないので、下に住む人のコンポストに捨てます。

 
 
お庭拝見!
池と畑
近所の庭をちょっと拝見。右に池、左に畑があるのは、あるご夫妻の庭。半分半分、好きなように使うことにしたそうです。だんなさんが池を造ったんですが『まさかこんな大きい池を造るとは!!』と、奥さんには不評…。池にはカメも住んでいるそうです。
庭の境
隣の庭(上の写真の左奥)との境。このエコ住宅では庭の境界に柵を作らず、必要なら木を植える決まりになっています。それもやはりエコロジーの一つだそうです。二つの庭のコントラストが鮮やか!
エコロジーの庭と、普通の庭
庭はさらにその隣へと続きます。右の庭(上の写真の左)は普通の芝生。左の庭は草原の草花を植えてあります。違いが分かりますか? 右側の芝生は化学肥料などを使っているので見た目がすごくきれいです。それに比べて左の庭は自然のことを考えた庭で化学肥料などは使っていません。エコ住宅に住んでいるといっても住民の好みはいろいろでから、庭の使い方を強制することはできません。

 
 
エコ住宅は広まるか?
友人のエコ住宅もすべてが計画通りにいっているわけではありません。住宅ができてまだ2年なので細かい数字は出ていませんが、省エネの効果は予想していたより小さいようです。太陽熱温水器、空気によるセントラルヒーティング(普通の住宅はボイラーで沸かした温水を使います)などまだ完全に働いてないものもあります。ドイツではエコ住宅が数多く造られていますが、まだ発展途中の技術です。

街も、こういったエコ住宅を応援しています。例えば税金の優遇があり、年間約6万円、8年間で合計50万円ほど税金が安くなります。ただ、この減税額も近いうちに縮小されるそうです(ドイツも財政難ですから)。また、柵の外の植え込みは、市が植えてくれました。普通の植え込みではなく、小鳥の餌場になるような木を選んで種類の違うものを植えてあります。「やっぱり緑のきれいな普通の植え込みのほうがいいなー」なんていう住民の声もちょっと。

エコ住宅に限らず、新しく家を建てたり庭を造ったりする人は環境に配慮しています。でも、ここまで徹底したエコ住宅はまだまだ少数。友人のエコ住宅は完全な住民参加で建てられたので、環境を考えてなおかつ住民の納得のいくものができたようです。しかし、そのために入居予定者は膨大な時間と労力を使いました。まず入居者の募集から始めましたから長時間かかり、途中で待ちきれずに普通の家を買った人もいます。

エコ住宅がこれからもどんどん広がっていくかどうか、次のような点がカギになります。

エコ住宅がどのような成果をあげられるか
住民の意識がどのように高まるか
・街の支援が厚くなるか
 

今回紹介した住宅は本来“低エネルギー住宅”と呼ばれていますが、エコロジー的でもあるので“エコロジー住宅”と書きました。実は“エコロジー住宅”という言葉、ドイツではあまり耳にしません。カールスルーエの低エネルギー住宅/エコロジー住宅については環境マガジン“エコロジーシンフォニー”にも書いてありますのでぜひ読んでみてください。
 

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