2. 木を切るべからず 2000/4/20

庭の木を切るには許可が必要
何かおかしいと思いませんか? モミの木の上3分の1が不自然に切り取られているのが分かるでしょうか。この木が立っているのはある知人のお隣さん宅です。知人を訪ねた時、窓から外を見て「あれ! 木が短くなった?!」と不思議に思い、知人に尋ねました。
事情はこうです。カールスルーエでは去年暮れの大嵐でたくさんの庭の木が倒れ、家が壊れました。そういう嵐を体験すれば、庭にある高い木を危険と感じるのはごく自然なこと。お隣さんはこの木を根元から切りたいのです。しかし、それは州の条例で禁止されています。個人の庭でも胴回り80センチ以上の木を切るには役所から特別な許可を得なければなりません。一般の人にはその許可がなかなか下りないのです。たしかに、市街地の緑は減る傾向にあるので、木を守ろうという理念は的を得ています。しかし、家や人の命が危険にさらされるとなれば話は別なはず。

そこでお隣さんはどうしたか? 知人の目撃談:「隣のだんなさん(50才くらい)はロープを肩に巻き、まるで“サルのように”するすると木に登った。そのロープに奥さんがノコギリをくくりつけ、上のだんなさんがそれをたぐりよせる。そして、ギコギコと木の上部3分の1を切断。さらに、残った木の幹の皮をガリガリと削り、どうやら何とかして木を枯らそうとしているらしい。」 なんとまあ、涙ぐましい努力!「だったら、目立たない夜中に切り倒せば?」 と知人に聞いたら、「自然保護に熱心な人がこの地区に住んでいて、常に無許可伐採を監視。切ろうものなら、通報され罰金を払う羽目になる。」のだそうです。

別のお隣さんは狡猾です。その人は自分の庭の木を数本切り倒しました。特にその木が危険なわけではなかったけど、気に入らなかったそうです。そして、胴回りの小さい切り株だけ残し、太いものには土をかけて証拠隠滅。役所の職員が来た時には涼しい顔で「切ったのは小さい木だけ!」 と言ったそうな。なんだか漫才みたいな話。

理念だけが先行し、実生活をかえりみないとちぐはぐなことになってしまいます。自然は大切。個人の財産も大切。両方のバランスをとるのは難しいですね。でもこの話は、緑地行政に疑問を持つ知人に聞いた話。お隣さんと役所の言い分は聞いていないので、この話だけで“○○がダメ!”と決めつけないでくださいね。こういう例もあるというはなし。

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