飲み水

カールスルーエの水の味は?
< もくじ >
水道水は硬水
140平方キロメートルの保護林
地下水の利点
保護林は市民の憩いの場
120年の歴史を持つ、市で最初の浄水場
昔使われていた給水塔が見える。
水道水は硬水
ドイツの飲料水はどこから来るのでしょう? ドイツ全体でみると30%は河や湖から、70%が地下水(湧き水を含む)から作られます。カールスルーエ市の水道水はすべて地下水から作られます。
街の広場にある水飲み場
人間だけでなく鳥も水を飲みにきます。
カールスルーエ市に引っ越して来てまず驚いたのは、水道水にカルシウムが多いこと。水道水を沸かすと、お湯の表面にうっすらとカルシウムの白い膜ができます。湯沸かし器や皿洗い機、洗濯機などもすぐに真っ白になります。そんなわけで、スーパーなどで売っている“カルシウム落し”(錠剤や液体)は家庭の必需品です。
シャワーのノズル
この通りすぐに真っ白。
俗に『カルシウムの多い水を飲んでいると結石ができやすい』と言われますが、医者に聞いたところ直接の関連はないそうです。はじめのうちはお腹を壊すこともありますが、それは慣れの問題です。日本ではこういう硬水を飲んでいなかったので、はじめのうちはとてもまずく感じましたが、3年たった今は慣れてしまいました。
 


140平方キロメートルの保護林

カールスルーエ市には4つの浄水場があり、市と周辺の町の40万人に水道水を供給しています。浄水場は地下水用の保護林の中にあり、その合計面積は140平方キロメートルにもなります。その中に地下水くみ上げ用の井戸が60本あり、地下20〜60メートルの深さから一時間あたり約3000トンの地下水をくみ上げています。
保護林の歩道沿いに立っている掲示板
市の4個所の保護林と浄水場の地図が描いてあります。赤い地区に井戸があり、そこは立ち入り禁止。その次に厳しく保護されているのが黄色、そして緑、黄緑と保護林が続きます。
カールスルーエ市で一年間に降る雨や雪の量は約750ミリメートル。そのうち約3分の1が土壌に染み込んで地下水となります。土壌がフィルターの役目を果たすので、地下水はとても衛生的です。薬品を使って殺菌する必要が無く、水道水が塩素臭くなることもありません。ただ、多量のミネラル分を含むことになり、浄水場で鉄イオンやマンガンイオンを取り除いてから各家庭に送られます。
 


地下水の利点

川や湖から取水するのに比べると多くの利点があります。まず、一定した量の水が得られます。降った雨はゆっくりと土壌に染み込んでいくので、地下水の量は季節的な変化がありません。例えば、夏に降雨量が少なかったとしても1年、2年、3年と長い期間を通してみれば、降雨量はほぼ一定してます。保護林の地下全体が巨大な貯水タンクだといえます。

また衛生的だし水温もほぼ一定です。特に夏場、冷たい水が得られるのはありがたいことです。水温が高くなると雑菌が繁殖しやすくなるし、感覚的に水がまずく感じられます。

水道水の水質(カールスルーエ市、1998年の平均値)

 
基準値
平均値
48時間、36度で細菌の繁殖を観察
(コロニーの数)
100 1
水温(℃) 25 10.5
酸素の含有量(mg/l) --- 8.9
亜硝酸イオン(mg/l) 0.1 <0.01
塩素(mg/l) 0.3 0
カルシウム(mg/l) 400 111
鉄イオン(mg/l) 0.2 0.02
マンガンイオン(mg/l) 0.05 <0.01

保護林は市民の憩いの場

大量の水をくみ上げるにはそれだけ広い保護林が必要になります。ドイツの中でもすべての街が十分な面積の保護林を確保できるわけではありません。油などで一度でも汚染されると、そこの地下水は使えなくなります。地下水の動きはとてもゆっくりなので、汚染が長期間続くからです。ですから、保護林の管理には注意が必要です。
地下水をくみ上げるためのポンプ(見学用)
市の140平方キロメートルの保護林の中に、こうしたポンプの付いた井戸が60本ある。
井戸の中には20から60メートルまでこのようなパイプが埋められ、その中に取水用の管がつるされています。無数に空いた穴から、水だけが管の中に入る。
保護林の中は一般の人が散歩したりサイクリングしたりできるように、歩道が整備されてます。ただ、取水用の井戸の周りは柵で覆われて、周辺10mほどは立ち入り禁止。さらにその外側の地区は自動車で入ることが禁止されています。保護林の中でも、井戸からの距離によって保護の度合いが違うわけですね。保護林の外でも隣接する土地では、ガソリンスタンドなど汚染の可能性がある建物の建設は制限されます。
地下水くみ上げ用のポンプ施設
実際にはこのように柵で囲われ、立ち入り禁止になっている。
地下水のくみ上げから、
水の処理まで描かれた掲示板
こういった掲示板が保護林のあちこちに立っている。
(日本語訳は 【 資料 】 に載っています。)
保護林の中を歩くと、飲み水について説明の書かれた掲示板がたくさん立っています。こうした啓蒙活動を通して、子供たちも水や保護林の大切さを学んでいくんですね。
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